概要
山種美術館は、山崎種二(1893-1983・山種証券[現SMBC日興証券]創業者)が個人で集めたコレクションをもとに、1966(昭和41)年7月、東京・日本橋兜町に日本初の日本画専門美術館として開館しました。
種二は「絵は人柄である」という信念のもと、横山大観(1868-1958)や上村松園(1875-1949)、川合玉堂(1873-1957)ら当時活躍していた画家と直接交流を深めながら作品を蒐集し、奥村土牛(1889-1990)のように、まださほど知名度は高くなくとも将来性があると信じた画家も支援しました。そして、「世の中のためになることをやったらどうか」という横山大観の言葉をきっかけとして、美術館を創設するに至ります。
その後も、二代目館長・山崎富治(1925-2014)とともに、旧安宅コレクション*の速水御舟(1894-1935)作品を一括購入し、東山魁夷(1908-1999)らに作品制作を依頼するなど、さらなるコレクションの充実を図りました。一方で、若手日本画家を応援するために「山種美術館賞」を設け(1971年から1997年まで隔年で実施)、受賞作品を買い上げ新たな才能の発掘と育成にも努めてきました。こうして収蔵された作品は現在約1800点を数えます。
1998(平成10)年には、設備の老朽化に伴い、桜の名所である千鳥ヶ淵にほど近い千代田区三番町に仮移転し、桜の季節には、桜を描いた作品とともに、多くのお客様に楽しんでいただきました。そして、2009年10月1日、渋谷区広尾に移転して新美術館をオープンし、さまざまなテーマによる展覧会を開催しています。2016年、開館50周年を迎えた当館では、21世紀のグローバル化した世界に向け、日本固有の財産である日本画の魅力を伝えていくために、国籍や性別、年齢を問わず、世界のさまざまな人々に親しんでいただけるよう、新たにシンボルマークをつくりました。また、世界へ羽ばたく新世代の日本画家の発掘、育成をめざし、公募展「Seed 山種美術館 日本画アワード 2016」を実施いたしました。
これからも、創立者の「美術を通じて社会、特に文化のために貢献する」という理念を継承し、理想的な環境づくりと質の高い展覧会を通じて、日本画の魅力を発信し続けてまいります。
*旧安宅コレクション:当時、日本の10大総合商社の一つであった安宅産業が蒐集した、東洋陶磁器と速水御舟作品を中心とするコレクション。1976年、安宅産業の経営破綻により、安宅コレクションの内の御舟作品を山種美術館が一括購入した。なお、東洋陶磁器は大阪市立東洋陶磁美術館に所蔵されている。
施設概要
2009(平成21)年に新築されたビル(ワイマッツ広尾)は、「品位と格調のある建築」「時代に流されない普遍的な価値」「ゆとりを感じられる居心地の良い空間」をコンセプトとして設計されました。外観は、美術館らしくなおかつ周囲に溶け込むような佇まいが感じられ、短冊状に連続する自然石の重なりの中に1階のロビーだけが見える構成となっています。開放感あふれるロビーから、地下1階の展示室へと至る階段脇の壁面(ロビー入口正面)には、加山又造(1927-2004)の陶板壁画《千羽鶴》が常設され、美術館の顔として皆様をお迎えします。
地下に位置する展示室は、企画展示室、山種コレクションルームと合わせて約650㎡で、心ゆくまで美術鑑賞ができるように設計されました。企画展示室は、天井高3.8m、総長40.5mの壁面展示ケースで屏風作品もゆったりと展示され、総長92.5mの展示壁面(可動壁使用最長時)には大型作品も自由に陳列が可能となりました。これらの展示室では年5〜6回の展覧会を通じて所蔵品を紹介しています。
また、LEDなどの最新の照明器具の開発には特に力を注ぎ、光源が鑑賞の妨げにならない独自の照明システムを実現させました。作品をやさしく包み込むような自然な光環境で、日本画を心ゆくまでご覧いただけます。
施設構成: |
1階:ロビー、受付(チケット販売)、ミュージアムカフェ(Cafe 椿)、エレベーター 地下1階:企画展示室、常設展示室、ミュージアムショップ |
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ロゴについて
「山種美術館」のロゴは、歴史や文学を題材にした人物画で有名な日本画家、安田靫彦(1884-1978)が揮毫したものです。日本や東洋の古美術を研究し、理知的な構図と典雅な色彩、そして緊張感ある線描によって独自の芸術を開花させた靫彦ならではの書が、40数年にわたり山種美術館の入口を飾ってきました。
初代館長の山崎種二が格別の想いをもって揮毫を依頼し、美術館のために書いていただいたこの文字を彫った看板は、エントランスと地下展示室入口で皆様をお迎えします。
シンボルマークについて
2016年に開館50周年を迎えるにあたり、新たにシンボルマークを作成しました。デザインは、日本を代表するグラフィックデザイナーである佐藤卓氏によるものです。
詳細はこちら→山種美術館シンボルマーク
加山又造陶板壁画《千羽鶴》について
陶板壁画《千羽鶴》(縦2.5m×横4m×2面)は、日本画家・加山又造が、親しく交流した2代目館長の山崎富治からの依頼により制作した作品。加山が絵付けし、その義弟にあたる陶芸家 番浦史郎(1941-2001)が土の成型と窯を担当しました。二人は、土の深い味わいが生かされた工芸美を目指し、何度も試し焼きを繰り返して苦心の末に本作品を仕上げました。素焼きの陶板に装飾的な波濤を鉄砂で描き、本焼きの後に飛鶴を金泥で描いて、さらに低温の錦窯で金泥を定着させて完成。釉薬は、自然木灰の釉が生きている黄瀬戸釉の系統のものです。俵屋宗達にはじまる琳派の代表的な図柄である波と鶴は、加山が好んだモティーフで、金彩の華やかさと陶板の素朴な風合いの対比が意図されています。
※「崎」の本来の表記は「山」偏に「竒」ですが、パソコン、携帯電話等の画面の読みやすさを優先し「崎」を使用しています。
受賞歴
○2009(平成21)年、社団法人 照明学会普及部主催の「照明普及賞」において、2009年の「優秀施設賞」を受賞いたしました。
※照明学会は、1916 (大正5) 年に創立され、わが国における照明技術の発展や照明知識の普及に大きく貢献してきました。「照明普及賞」とは、その年に竣工した優れた照明施設を表彰する賞です。
○2010(平成22)年、北米照明学会主催の「国際照明デザイン賞」に選ばれました。北米照明学会(IES 本拠地:ニューヨーク)による「国際照明デザイン賞」にノミネートされ、「メリット賞」(有意義な貢献をした照明デザインに授与される賞)を受賞いたしました。
※IES国際照明デザイン賞は、国際的に専門技術性と独創性が評価されるものに与えられる賞です。
○2010(平成22)年「グッドデザインアワード2010」において山種美術館の建築に対して、設計を手がけた(株)日本設計とともにグッドデザイン賞を授与されました。
※グッドデザイン賞とは、財団法人日本産業デザイン振興会が主催する総合的なデザイン評価・推奨制度です。
○2010(平成22)年12月3日、社団法人企業メセナ協議会主催の「メセナアワード2010」において、メセナ大賞部門・「日本画応援賞」を受賞しました。
※企業メセナ協議会は、企業や企業財団による優れたメセナ(芸術文化支援)活動を顕彰する「メセナアワード」を実施しています。このアワードは、[メセナ大賞部門]と[文化庁長官賞部門]の2部門からなり、芸術文化活動への資金提供や、地域の活力を高める取り組みなど、芸術文化の振興につながるあらゆる活動を対象としています。